そのへんが難しい

 授業中とか、議論の最中に「難しい」って言葉をついつい言ってしまう。しかしながら、この言葉は、思考を停止させる、または、何かから逃げる言葉である。
 「そのへんが難しいところなんですよね。」という一言からなにか生まれた例がない。
 そんなことを気にしていると意見を求められている人が「難しいんですけど…」と言って話し出すだけで、大したこと言わないんだろうと思ってしまう。「私だめですから、徒然なるままに話します。」と言っているように聞こえてしまう。
 私もよく言っていたが、気にしだしたら使わなくなった。で、考えようと、発言には気をつけようと思うようになった。

 ってのが、最近まで思っていたことで。

 最近、授業で、いつもスウェットで体連であろう男、いつも「ムズカシイッスけど…」と言っていた男が、「難しいっす、わかんないっす。」と言って他は何も言わなかった。なにをふざけてるんだと思っていたのだが、少し経って見ると、参考資料を黙々と読み返していた。なんだか、それは、アリのような気がして、「難しい」「わからない」という言葉にある、物事をぼかさないで考えるための使い方を見たような気がした。彼と一度話をしてみたい。そう思わせる、たぶんいいやつ。
 教育哲学のときの「難しい」の使い方に巧です。